北京プロジェクトⅡ

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プロジェクトヒストリー

  • 2004.1.11 21世紀COE文明戯研究会(早稲田大学)にて「京劇上演データベース構築のパースペクティブ」発表(千田)
  • 2002.8.16~30 2002年度夏期現地調査(北京・山西)
  • 2002.8.3 2002年度夏期現地調査準備会
  • 2001.11.17~26 北京・山西予備調査(千田)

プロジェクト概要(科研費申請書から)

1. 研究の背景

中国における伝統演劇研究では、十年来、農村の演劇・芸能を対象とした文化人類学的な調査・研究が内外の研究者によって進められ、近年の史学・社会学分野における地域経済史研究の成果とあいまって、新たな地域文化に根ざした演劇史像を描出し、中国人のメンタリティーの源泉を究明しつつある。しかしながら、各地の農村における個別の事例が明らかになるのにともない、農村と地方都市、大都市とを結ぶ、経済・文化ネットワークの実態解明が新たな課題として浮上している。この問題を研究するには、従来取り上げられることの少なかった大都市の大衆に支持された演劇のあり方を具体的に解明し、農村演劇と比較検討することが必要である。

北京とその後背地域である河北省・山西省・東北地方などに清末以降流行した京劇および皮影戯(影絵人形芝居)は、現在でも上演機会が多く民国時期を知る老芸人が存命であり、また脚本や民国期以降の地域調査報告といった各種文献資料が豊富に残っていることから、研究対象として格好であると判断される。

2. 研究の目的

以上の背景のもと、本研究では二十世紀初頭以降、北京を中心とする北方中国に流行した京劇と皮影戯について、

  • 大都市の多様性に支えられた演劇の様態と相互関係
  • 大都市と周縁部の中小都市・農村との文化交流ネットワークの実態
  • 演劇・芸能による物語の流通と受容の実態

以上の三点の解明を目的とする。

この時期には、京劇はラジオ・レコードなどのニューメディアの普及によって全国的に最盛期を迎え、北京皮影戯は灯火と映画の普及によって没落の道をたどったとされる。従って、研究を進めるにあたり、西洋近代が中国伝統文化に与えた影響という問題についても調査・解明する必要がある。

3. 研究の特色

本研究の特色は、民国時期の都市文化の多様性を、従来の美学的な文学・演劇学研究にとどまらず、言語学・社会学・宗教学などの隣接領域の連携によって、立体的に考究する視点にある。また、従来は資料的制約から研究が困難であったテーマを、現地における聞き取り調査・文献資料収集・撮影などによって実現する手法を採るが、これは既に高齢に達しているインフォーマントの貴重な証言を後世に伝え、演劇を動態保存する点からも意義深いものと思われる。一方、近年、中国では戸籍問題など都市と農村との関係が社会問題としてクローズアップされているが、本研究が目的とする都市と農村との文化交流ネットワークの解明は、そのような現代中国の諸問題を理解する上でも多くの新たな知見をもたらすことであろう。

また、研究過程で収集された各種資料は全て電子データ化して研究の効率化をはかるとともに、研究完了後はCD-ROMおよびインターネットWWWを通じて無償公開する計画である。中国近代演劇に関する学術データベースは世界的にも稀であり、日本発の中国学学術データベースとしても画期的意味を持とう。


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